2009/09/23

羆撃ち



 「脆く壊れやすい、しかし私にとっては望めばすべてがあり、与えてくれたのが自然であった。獲物が、山菜が、川には魚が、厳しさが、優しさが、そして夢と冒険がそこにはあった。脆く壊れやすく、儚そうで強い自然だからこそ、その中にどっぷりと浸かりきってみたい、自分の野生を確かめてみたかったのだ。その自然からは貪るようなことはするまい、と常に自分に言い聞かせてきたはずであったのに、気付かぬうちに楽をして多くを望んでしまっていた。
 驕りであったのか、油断だったのか。いつのまにか自分が最も戒めていたはずの、自然から貪ろうとする卑しい根性に取り付かれていたのだ。牛飼いの暇に出かける猟であっても、フチといるだけで充分、充分過ぎたのだ。」 (305-306頁)

0 件のコメント:

コメントを投稿